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■HP蜘蛛夢■


(初版2000.10.29;微修正2014.10.16;更新2011.2.21)

【比例代表制選挙の名簿順位について】




参議院選挙の比例代表制の成立:
以前の参議院選挙では、全国区と地方区の投票が行なわれた。 1982年、自民党政権時に全国区を廃止して、拘束名簿式比例代表制と 選挙区の選挙制度となった。拘束名簿式とは、あらかじめ政党が順位を決めて 候補者リストを提出するものである。2000年、非拘束名簿式比例代表制と選挙区の 選挙制度に変更。非拘束名簿式比例代表制は投票は政党名か候補者名で行ない、両方の 合計を政党の得票として、順位は候補者名での投票にもとづいて決めるもの。

衆議院選挙の小選挙区比例代表並立制の成立:
以前の衆議院選挙は1つの選挙区から2〜6名の議員が当選する中選挙区制だった。 1994年、細川連立政権時に小選挙区比例代表並立制が採用された。 これは総定数の一定部分を小選挙区で、残りを比例代表区で別々に選挙する制度。 小選挙区で当選するのは1位の者だけ。比例代表区では、政党の届けた名簿の順位に より、政党の得票数に応じた人数が当選する。ただし、小選挙区と比例代表区の 重複立候補者は同じ順位で届けることもできる。その場合は、惜敗率が高い順に 当選する。惜敗率は小選挙区における落選者の得票数を当選者の得票数で割った数字。 衆議院の比例代表区選挙は参議院とは違って地域ブロックに分けて行なわれている。


2000年10月29日

子どものころ私は死票が少ないから比例代表制選挙が合理的だと考えていた。しか し、日本に実際に比例代表制ができてみると名簿順位の決定にかなり問題があるようで ある。

当初、自民党は党員獲得数や金集めの実績で決めていたという。これはこれで一つの方 法である。しかし、上等ではない。会社の営業の成績競争みたいだ。しかも営業マンと は違って自ら党員の勧誘をするわけではない。業界団体や官僚と癒着することで達成し ているという事らしい。つまり腐りやすい方法なのだ。

政党執行部が決めるという方法もよくやられているようである。これも上等ではな い。専制的で根拠が不明。下位や選ばれなかった党員はなぜ我慢できるんだろう。

もし政党に機関紙や会合での十分な政策論争があるとしたなら、党員の互選という 方法も考えられる。これは日常の活動が反映されるので根拠が明確である。 自然科学系の学会では会長や編集委員などを互選で選んでいる。もちろん政党とも なれば派閥活動など激しくなるかもしれない。また定員、党員の数が多いから工夫 しないと難しいかもしれない。

参議院の選挙について政党でも候補者名でもどちらでもいいという非拘束名簿式が 成立した。いろいろ批判されてる。成立過程の強引さ、票の横流し論、全国区同様に金 がかかるという批判などだ。候補者名での投票は比例代表制の論理に反する ので私も強い違和感を持った。しかし、横流し論については少し再検討すべき点が ある。

もし、支持政党と投票する候補者の政党が完全に一致してるなら候補者名での投票 でも政党名の投票と変わらない。しかし日本の状況は政党支持と候補者個人支持が完全 に一致してるなんて言えない。だとしたら、考えられる方法は政党と候補者名の独立二 重投票制度である。獲得議席数は政党への投票で決めて、順位は政党への投票とは無関 係に個人名での投票によって決める。なぜこの方法の提案が全くなされなかったのだろ う。


2001年1月6日

昨日の記者会見で民主党幹事長(菅直人)が非拘束名簿式の投票で党名記載を要件に する改正案を提出すると言ったそうだ。私の考えてるのと同じ方式なのかどうか細部が 分からないが、出すのが遅すぎる。


2001年4月3日

選挙制度だけ変えても十分ではない。政党内部の組織の在り方が合理的でなければ ならない。資金調達の実績で政党内の地位を買えたり、地元に飴玉をしゃぶらせること で当選回数を重ねられて地位があがるというような政党ではダメだ。政党助成金が配ら れるのだから、政党の人事の在り方に制約を課すべきである。たとえば執行部の選出は、 談合や国会議員だけ優先される選挙ではなく、党員全員の平等な投票を必要とするという ような条件をクリアしない政党には助成金を出さないとしたほうがいい。


2005年9月23日

衆議院選挙は小選挙区比例代表並立制であり、重複立候補者は小選挙区の惜敗率の 大きさで順位づけされる。小選挙区の当選者に近い得票数を得た候補は、 小選挙区で落選しても比例区で復活する可能性がある。

今年の衆議院選挙に関して、小選挙区で落選した候補が比例区の重複立候補で復活 することに批判的な意見が聞かれた。並立制をやめて小選挙区だけにすべきだという 意見もあった。

小選挙区制は政権交代をしやすい選挙制度だということで導入されたようだが、 全体の投票率の差はあまりないのに優勢な政党に当選者が極端に偏る制度は不当である (自民党には1950年代から、小選挙区制を望む動きがあった。政権を握っていた自民党 が政権交代を望むわけはなく、憲法改変を狙っていたのだろう)。

中選挙区制は自民党内の派閥政治と金権政治をもたらした。 比例代表だけだと無所属候補の出馬が困難になる。 小選挙区と比例代表制を組み合わせることは悪くないかもしれない。

現制度の問題の一つは惜敗率による順位づけである。 惜敗率は小選挙区だけで計算される数値であり、地域性が強くて比例代表名簿の順位づけ としては適切でないかもしれないことだ。またブロック制も死票が多くなるので問題だ。 今回の選挙を見ると死票が多すぎる。小選挙区議席の割合をもっと減らすべきである。

衆議院にかんしても比例代表候補の名簿に対して政党と候補者名の 独立二重投票制度がよいのではないだろうか。



2005年9月24日 (選挙制度以前)

今年の衆議院選挙では、選挙制度のほかに深刻な問題が存在する ことが明白になった。私の印象なのだが、雑誌や新聞などの活字メディアでは 小泉政権に関して、批判的な評論は以前よりも、かなり増えていたように思う (反対の印象を述べている人もいるので、誰か定量的な調査をしてほしい)。

それにも拘わらず投票結果は評論の動向とは逆に小泉自民党が圧勝した。 有権者が十分に情報を吟味した結果ならば言うことはないが、そうではなく、 『刺客』とか『くノ一』などとはやしたてたテレビが活字メディアの評論を 圧到したと思われる。

読売新聞(2005年8月28日)はインターネット利用者1000人にアンケート調査した結果 を公表している。一日にテレビを3時間以上見る人は、 投票したい政党を自民としたのが57%だった。 ところが、一日にテレビを30分未満しか見ない人は、 投票したい政党を自民党としたのが32%、 民主党としたのが34%で逆転していた。

活字メディアに無関心な有権者がかなり多いと思われる。 テレビの在り方やメディアリテラシー、政治に関する教育の在り方について 考えてみるべきだろう。ドイツでは高校の授業で各政党のマニフェストを比較する という(朝日新聞、2005年10月4日)。

多数の人が十分な情報を得ることなしにイメージだけで投票するならば、 目隠し運転の自動車に乗せられているようなものだ。

マスコミも行政も、選挙に関する基本的な知識や情報の提供が足りなすぎる。 一方では有害無益な情報は氾濫している。



2009年9月16日

ようやく政権交代が起きた2009年8月の衆議院選挙について、毎日新聞(2009年9月15日)の「記者の目」(佐々木雅裕)が分析している。

民主党の比例での得票は42%。定数に占める獲得議席(87)の割合は48%である。それが小選挙区では、47%の得票率で、獲得議席は74%(221)だった。

小選挙区で議席に結びつかなかった「死に票」は3270万票。有効投票の46%が生かされなかった。

「重複立候補」により小選挙区の落選者97人が比例で復活した。比例代表当選者の2人に1人にあたる。その結果、議員が2人いる小選挙区は91区もできた。議員が3人もいる小選挙区も3区ある。このように重複立候補制度は、1票の価値に県間格差を生む。

重複立候補は無所属侯補には利用できない。元々は小選挙区制に難色を示す勢力への 説得材料として導入された色合いが濃く、明確な理念は見当たらない。重複立候補制度を廃止して、 比例代表を軸とする制度に移行すべきだ。



2011年2月21日

そもそも参議院選挙には、選挙区選挙という大きな欠陥がある。 毎日新聞(2011年2月20日)のコラム「時代の風」で加藤陽子は川人貞史の選挙分析を もとに、以下のように書いている:

参議院では、定数242の半数121議席が3年ごとに改選される。121のうち73を 選挙区で配分し、48を比例区で配分する。選挙区の「1人区」、比較的人口の少ない 29県の動向が不自然に大きく結果を左右する。





著:佐藤信太郎
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